基幹業務システムを、自社開発システムからERPに入れ替えると、システム部門の人材にはそれなりのインパクトがある。

   IFRS(国際財務報告基準)の導入で、会計部門の方々が受ける影響よりも大きいと思う。

   日本独自の会計基準からIFRSに切り替わることにより、会計部門の方々には、それまでは金融庁などが決めた会計ルールに従って仕事をしていればよかったのが、自社の会計ルールを自分たちで設計することになり、“自分で考える” ことが求められる。

   最初は大変だが、個人の能力の向上という意味では、前向きの変化だと思う。

   さて、システム部門で業務系のシステムを設計・開発・保守してきた社員がERPへの切り替えで受ける影響は、経理部門の方々の場合とは逆なのかもしれない。

   自分が長年培ってきたスキルがいらなくなるからだ。特にCOBOLなどの言語でシステムの設計・開発に従事してきた社員には、ダメージが大きいと思う。

   ERPを導入すると、新規にシステムを設計・開発するという作業は激減するからだ。というよりも、ERP環境下では、システムを作った社員しか保守作業できないようなソフトの開発は、禁止することになるからだ。

   ERPを導入することによる大きなメリットの一つに、“システムのブラックボックス化の回避”がある。

   その業務システムを開発した人材が(退職などで)いなくなることでブラックボックス化していた業務システムを、ERPを採用することでブラックボックス化しない仕組みにできるからだ。

   なので、システムの設計・開発という仕事は激減し、採用したERPが持っている機能からパラメータを選択するというようにシステム作りの仕組みが変わるのだ。“システム開発” から “機能の選択” に変わる、と説明した方が的を得ているかもしれない。

   ERPを導入した後に、システム部門の方がERPのデータを使って新規のシステム開発を行うと、グローバルな拠点でのERPをデータセンターに一元管理しようとしたりERPをバージョンアップする際に、ERP導入後に開発したシステムが、業務システムの一元管理化やバージョンアップをする際の障害になってしまう。

   システムの開発者は、ユーザーのために良かれと思って行うが、ユーザーがその手作りのシステムを使って気に入ってしまうと面倒なことになる。

   自社開発システムをERPに入れ替えると、それまで業務システムを開発してきた方々のスキルは、ほとんど不要になる。

   つまり、業務系のシステムを開発してきた方々の仕事は激減するので、他の仕事に移ることになる。

   これは、避けられない現実だ。これからJava(※)を学ぶ意欲があれば、ネット販売などWeb系のスキルが必要な仕事に就くことができる可能性はある。

    ITに限らず、技術はいずれ陳腐化する。(複式簿記のように、過去・現在・将来に渡って陳腐化しそうにない原理もあるが。) 世の中が進歩している証しもある。

   ちなみに、私がマスターした言語は、軽く10種類を超えている。Fortran、アセンブラ、COBOL、PL/1、Lisp、Prolog、Pascal、C、Java、SQL、...

今となっては、不要になってしまった。