「ERP導入の失敗を避ける5つの条件」は、【ERP 導入 指導】や【ERP 導入 コンサル】などでググる(Googleで検索する)とトップページに表示される。

弊社のサイトは、それなりの価値があるようだ。

尚、この記事では、“一つでも満たさなければ必ず失敗する条件” について説明している。
言い換えれば、全ての条件を満たしても成功するかどうかはわからない、ということだ。

■ 1つ目の条件は、「有能なプロジェクトリーダーの確保」だ。

さらっと書いてしまった。

文中の “有能な” という言葉には、様々な意味が含まれている。

ERP導入のリーダーには、どのような能力が必要なのだろうか?

ERP導入のプロジェクトリーダーに必要な7つの能力

本邦、初公開だ。
なぜなら、私が、ユーザー企業での数々の実体験で得た教訓をもとに作成したからだ。

  1. 財務会計、販売管理、購買管理、生産管理、貿易(輸出入)などの業務知識
  2. 情報ネットワーク、データベースなど、IT全般の技術知識/経験
  3. 全社的なプロジェクト推進体制の構築能力、強力なリーダーシップ 
  4. 経営トップや現場のキーパーソンとの緊密なコミュニケーション能力 
  5. 現状の業務分析、業務システムの再構築に不可欠な業務改革/部門間の調整能力 
  6. 予算と実績の差異を管理して予算内に抑えようとするコスト意識 
  7. ERPの導入方法論に関する深い理解

一気に書いてしまった。ERPの導入プロジェクトを担うリーダーには、これだけの能力が求められる。

ERP導入プロジェクトを担うリーダーは、“スーパーマン” なのだ。
失礼、“スーパーレディー” かも...

もし、社内に1から6までを満たす人材がいたとしても、7を満たす人材はいないはずだ。

なぜなら、ERP導入(含 入れ替え)の必要性は、短くても5年に1回くらいしか起きないので、ERPの導入を推進するリーダーは、大半の場合、ERPの導入を実体験していないからだ。

尚、7番目のERPの導入方法論は、ERPベンダーのERPコンサルタントでも、極めて少数の方しか実践できていない。

どうして導入したERPを経営に効果的に活用できている企業が少ないのだろうか?大企業であれば有能な人材が多いので大丈夫なのでは?

残念だが、その考え方は間違っている。というよりも、逆だ。

会社の規模が大きくなればなるほど分業が進んでいるので「リーダーに必要な7つの能力」を満たす人材はいなくなる。

起業当時に、上場企業の情報システム部門の責任者への電話でのインタビューでわかったことは、15社に1人くらいしか、7つの能力がある人材はいないと感じた。

例えば1の業務知識だが、ERP導入プロジェクトのリーダーは、どうしても習得する必要がある。

経理課長と標準原価計算の話をしたり、生産管理部門の責任者とMRPの精度を高めるための対策を練るには、簿記やMRPへの深い理解なしには議論できない。

現実には、簿記とMRPの両方を理解している方は、ほとんどいない。

2の能力は、情報システム部門の責任者の実体験がある方でないと満たせないはずだ。

ERPはITの塊なので、ERPの導入を推進するリーダーには、ITへの包括的な理解が欠かせない。

「7つの能力」を満たすことが、どれほどのレベルなのか、ご理解いただけただろうか。

ちなみに、私には、大阪の某上場企業で役員の方々が20人位おられる席で、副社長の “こんな能力がある人材はいるはずがない!” との発言に、反射的に “目の前にいます!” と発言した実体験がある。

その役員会が終わってすぐに別室に呼ばれ、会長から会社の成り立ちなどの説明を受けた。

■ 2つ目の条件は、「最適なERP製品の選択」だ。

どのERP製品を選択するかは、事前に

  1. 選択に必要な評価項目を洗い出し
  2. 評価項目毎の重み付け (Must項目、Want項目の区別) を行って
  3. 選択の候補にするERP製品を3つくらいに絞り込んで
  4. ERPベンダー各社にプレゼンをしてもらう

ことになる。

ここでの問題点は、プロジェクトのメンバーの方々は、ERPの専門知識がないにもかかわらず、ERP製品を自分たちだけで選んでしまっている ことだ。

ちなみに、取引しているITベンダーにERP製品の紹介を依頼してしまうと、その時点で、選択できるERP製品の幅を相当狭めてしまうことになる。

■ 3つ目の条件は、「ERPベンダーの適切なERPコンサルタントの選定」だ。

Attention!

ERPコンサルタントにERPのプレゼンをしてもらった。素晴らしかった!

でも、その素晴らしかったERPコンサルが、自社向けの導入を担当してくれるのか、その場で確認してください。

この3つ目の条件は、文面に注意を払ってください。

ERPベンダー(企業)の知名度で選ぶのではなく、自社を担当するERPコンサルタント(個人)の力量で選ぶことが、とても重要だからだ。

自社向けに割り当てられたERPコンサルの力量をどうやって見分けれべいいのか、という課題は残るが...

1つ目の条件である「有能なプロジェクトリーダーの確保」ができれば、ERPの導入に失敗する可能性は、相当減ることになる。

なぜなら、リーダーが中心になってERP製品やERPベンダーを決めるからだ。

ということは、有能なプロジェクトリーダーが確保できなければ、ERPの導入は、遅かれ早かれ、失敗することになる。 

要するに “プロジェクトリーダーがERP導入の成否を決定的に左右する” ということだ。

ちなみに、リーダーとERPコンサルとの相性が合うかどうかも重要な要素だ。

私が、自動車メーカーが顧客の外資系企業にITマネージャーとして入社した時のことだ。この企業では、私が入社する前に2回続けてERPの導入に失敗していた。

ERPコンサルを決める際に、それまで2回とも担当していたコンサルが、同じ会社の他のコンサルを紹介してきた。

自分には “EDI(※)の導入経験がないので...” が、表向きの理由だった。

      ※ EDI - 顧客と自社との間の受発注データの情報通信ネットワーク

紹介された別のERPコンサルからEDIの説明を受けた。

別のERPコンサルのプレゼンを聞きながら、私は感じた。
“このコンサルとは、いい関係を築けそうにないナ” と。

プレゼンが終わった後で、同席していた (筆者の入社前に続けて2回導入に失敗していた)コンサルに、私は言った。

“Xさん (紹介された別のコンサル) とは、うまくいきそうにありません”
“Yさん(2回失敗していたコンサル)と一緒にやりたい” と。

Yさんにしてみれば、2回も失敗していたので自分は外れたほうがいいと思っていたはずだ。同じ企業での3度の失敗は、ERPコンサルとしてやっていけなくなる...

でも、私には、すでにわかっていた。
失敗の原因は、他にある (あった?) ことを...

私は、失敗を引き起こした原因に対して強力に立ち向かった。

たとえ、それが直属の上司であったとしても... 

ERPの導入を推進した前任者、前々任者に不足していたのは、強力なリーダーシップだったのだ。

多分、簿記の知識も...

2回失敗していたコンサルが頑張ったことは、言うまでもない。

私の予想通り、優秀だった。
なんと、月額単価の値上げを打診したのに、応じなかったのだ。

3回目のERP導入は、大成功に終わった。

そして、私の上司は、3人のERPコンサルと私を、新宿伊勢丹近くのバニーガールがいる会員制のお店で接待する羽目になった。

マツタケの土瓶蒸しは美味しかった!

ちなみに、プロジェクト管理は、QCD(品質、予算、納期)よりも、メンバーのモチベーション管理の方が、断然重要だ。

■ 4つ目の条件は、「現場のキーパーソンの積極的な参画」だ。

メンバーの中に、ERPでの基幹システムの再構築に後ろ向きな人材が一人でもいると、チームワークを乱すことになる。

なので、現場のキーパーソンであるだけでは不十分で、積極的に参画する意欲があるかどうかも、しっかり確認する必要がある。

■ 5つ目の条件は、「経営者からプロジェクトリーダーへの強力な支援」だ。

プロジェクト体制では、運営委員会を設ける。

この運営委員会のメンバーの方々は、リーダーよりも役職が上位なので、リーダーが経営者(プロジェクトオーナー)から支援を得られないと、意見の衝突が起きた時、調整できなくなる。

尚、1番目から3番目までの条件は、この順序(1番目 ⇒ 2番目 ⇒ 3番目)が重要 だ。

例えば、3番目を行ってから2番目を行なおうとすると失敗してしまう。
理由は、すでに説明した。 

ちなみに、情報システム部門が関与しないERPの導入は、確実に失敗する。

なぜなら、ERP導入後の維持管理業務が宙に浮いてしまうからだ。

ブラックボックス(※)化しないはずのERPが、ブラックボックス化してしまうのだ。
※ ブラックボックス - 社内の誰もシステムの仕組みを知らない状態

この5つの条件を満たすことができれば、ERP導入失敗の可能性は、相当減ることになる。

最後に、もう一度繰り返す。

ERPの導入失敗を避けるための最重要課題は、有能なプロジェクトリーダーの確保 だ。


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