ERP導入失敗 - その現実
7割以上のERP導入企業が、導入したERPに不満を抱いている。
4割以上の企業が、導入したERPを入れ替えている。
また、ERPの導入に失敗した企業は、導入失敗を繰り返している。
ERPの導入 “失敗” とは
ところで、ERPの導入失敗だが、“失敗”とは、何を意味するのだろうか?
ERPの導入に失敗したと感じていても、導入前の状況、導入時期、期待していたこと、などで千差万別だ。
立場による違い
- ERPを毎日使うユーザーの立場
- ERPを活用して自部門の業務処理の生産性向上に責任がある部門責任者の立場
- ERP導入プロジェクトのメンバー(各部門の代表者)の立場
- ERPの導入プロジェクトを推進したプロジェクトリーダーの立場
- ERPの高額な投資予算を承認した経営者の立場
- ERPの導入を支援したERPベンダーのERPコンサルタントの立場
時期による違い
- ERPの本番稼働前にリーダーがプロジェクトを管理できない状況になってプロジェクトがとん挫してしまったのであれば、失敗したことは明らかだ。
- ERPが本番稼動して2か月後では、失敗したのかどうかはまだわからない。なぜなら、ERPが本番稼働してから2か月程度では、部門ユーザーの方々が、新業務プロセスに慣れていないからだ。
- ERPが本番稼働してから1年以上経っており、経営トップが投資効果を実感できていないのであれば、失敗している可能性が高い。BIシステムが関係しているので断言はできないが。
- ERPの導入を推進したリーダーが、ERP管理者として部門横断での業務改革を推進できていない状況なら、失敗したと断言できる。
期待していたことによる違い
- 経営者が迅速・的確に経営意思決定ができる環境ができていないのであれば、失敗だ。
- 自社開発していたシステムをERPに入れ替えただけで、ゼロベースで業務プロセスを再設計する機会を逃した、つまりERPを以前の業務システムの仕組みに合わせてしまったのであれば、失敗だ。
- 前のシステムはブラックボックス化していて、維持管理に支障をきたしていたのでERPで基幹システムを刷新したのであれば、失敗したかどうかはわからない。ERPの導入方法論を適用しなかったのであれば、確実に失敗している。
複数の海外拠点があるグローバル企業の場合
- 複数の海外拠点に導入したERP製品が異なる場合、本社の経理部門が各拠点のERPにアクセスできないので失敗だ。
- 同じERPを導入していても、各拠点のERPに設定したパラメータがバラバラであれば、業務プロセスが異なるので、拠点横断での業務プロセスの継続的な改革ができないので失敗だ。
- 各拠点の製品コードや顧客コードが同じになっていないと、BIを用いた拠点横断での経営意思決定に寄与する仕組みが構築できていない。同じお客様に、同じ製品を、国によって異なる価格で提示する不具合も起きているはずだ。
ERPの導入 “成功” とは
ERPの導入に ”成功した” とは、どういう場合なのだろうか?
- ERP導入の所期の目的が達成されたことを検証できた。
- 経営者が、迅速な意思決定ができるようになったので満足している。
- ERP本番稼働後に、部門横断での継続的な業務改革が推進できている。
- 会社の外部環境の変化に業務プロセルを迅速に対応できる仕組みになっている。
ところで、このサイトでは、ERPの導入前と導入後では、分けて説明することにしている。
ERPの “導入” と “活用” の違いだ。
ERPの “導入” と “活用” の違い
会計でいえば、財務諸表ができるまでとできた後との関係だ。財務諸表ができるまでは財務会計の領域であり、できた後は管理会計の領域だからだ。
ERPの導入前と導入後は、どこで分かれるのだろうか? ERPの本番稼動時点だ。ERPの本番稼働前は、“導入” 段階、ERPの本番稼働後は、“活用” 段階だ。
尚、ERPが本番稼動した時点では、ERP導入の所期の目的の達成を検証できるようになるまでの工程の半分(50%)しか終わっていない ことを、覚えておいてください。
ところで、ERPは単なるソフトウェア、つまり道具だ。同様に、ITは単なる道具に過ぎない。 ご承知のように、利益 = 売上 - 費用 だ。
なので、ERPは、最終的には売上を上げるかコストを下げる活動に役立つ必要がある。
経営者の意思決定に役立つ信頼できるデータを迅速に提供できる仕組みも肝要だ。
売上を上げるための活動とコストを下げるための活動は、別々の活動のように思えるかもしれない。
両方の活動に共通することは、なんだろう?
共通することは、業務プロセスだ。
ということで、ERPと業務プロセスとは、密接に関係している。業務改革を “全社的に”、“確実に”、“迅速に” 行うための道具として、ERPはとても役に立つ。
間違っても、ERPの導入そのものが目的化してしまってはいけない。あくまでも手段に過ぎない。
ERPの導入失敗 - 考えられる原因と失敗の状況
それでは、ERP導入の失敗について、失敗の原因と失敗の状況を、思いつくままに書いていくことにする。( 網羅性はない。失敗の原因は、∞)
- 現場のキーユーザーがプロジェクトメンバーとして参加しなかったので、システムが使いづらく、現場のユーザーがERPを使うことをボイコットしてしまった。
- パラメータの設定作業での検討が不十分だったために、本番稼動後に運用が回らなくなってしまった。
- 前のシステムと新システムでの業務の流れの相違点をユーザーが理解していないため、ユーザーの操作ミスや入力ミスが相次いで、膨大なデータの修復作業が発生している。
- 経営者自らが、ERPへの切替えについて全社員への通達と協力要請を行わなかったために、ユーザー部門が抵抗勢力になってしまった。
- マスターファイルの整備が不十分だったためにERPからの出力データが信用できず、MRPから出力される製造オーダーが使われず、購買オーダーだけ使われている。
- ユーザーからの仕事のやり方が変わることに対する強固な抵抗に屈してERPをカスタマイズしてしまったため、ERPのバージョンアップができなくなってしまった。
- プロジェクトリーダーのリーダーシップが弱いので、部門間の利害の対立がなかなか解消せず、プロジェクトの進捗が大幅に遅れてしまった。
- ERP導入の段階で問題が山積してしまい、プロジェクトが管理不能状態に陥り、プロジェクトが頓挫してしまった。
- マスターコードの再設計を十分に検討して設計しなかったため、データを活用する段階になって、必要な切り口でデータを分析できないことがわかった。
- 日程的に無理な導入計画を強行したため、十分なテスト期間が確保できず、本番稼動後にシステム上/業務処理上の不具合が多発している。
- テスト段階で、キーユーザーのデータ検証の時間が足りなかったため、システム上の不具合を見逃し、本番稼動してから不具合が次々に露呈し、現場が混乱している。
- ピーク時のデータ量を使った負荷テストを行わなかったため、システムからのレスポンスが非常に遅く、業務処理に支障をきたしている。
- ERP管理者に簿記の知識がないため、経理部門からみれば簡単と思える不具合でも、毎回ERPコンサルタントに別料金で頼まなくてはならない。
- 情報システム部門が、ERPが稼動した時点でシステム再構築プロジェクトが終わったと勘違いし(実際は、燃え尽きて)、その後のフォローアップをなおざりにしたため、現場から導入後に発見された不具合案件が山積みになっている。
- ユーザーへのERP導入の目的の説明が不十分だったため、ユーザーが発生ベースでデータを入力しておらず、経営意思決定向けにデータを加工しても、前日までの最新のデータになっていないので、リアルタイム経営が実践できていない。
- ユーザーへのERP教育が不十分だったため、せっかく便利な機能があるのに活用されていない。
- 自社の業務に適さないERPを選定したので、使われない機能が多く、一方で機能が足りないために、旧システムのの一部を、いまだに使い続けている。
- ERPを導入しただけで、導入後の継続的な業務改革に取り組んでいないために、経営者が依然として投資効果を実感できていない。
- 情報システム部門が、ERPベンダーに導入作業を丸投げしたため、導入後に問題が生じたり変更などの必要性が生じても、本番稼動後もERPベンダーに頼るしかなく、社内にERPの活用に必要なノウハウが残っていない。
- ERPパッケージの選定作業が不適切だったため、維持管理コストとバージョンアップコストが割高なERPを選択してしまった。
ERP導入の失敗を避ける根本的な対策
ERPの導入に失敗する原因はいくらでもあるが、上記の原因を避ける対策を講じることは簡単だ。なぜなら、根本的な対策は一つしかない からだ。
私の25年以上のERPに関わる実体験で獲得した実践的なノウハウを体系化して制作した『ERP管理者 養成講座』を活用して 短期間でERPに精通した社内人材になることだ。
ところで、ERPの導入が成功したかどうかを検証できるのは、どうしてもERP導入コンサルが導入作業の支援を終えていなくなって半年くらい先になってしまう。
残念ながら、その時点では、導入作業を支援したERPコンサルは、他社の支援を行っている。
結果的にERPを入れ替えることになったり、経営者がERPへの高額な投資効果を実感できていない 原因の大半は、ERPの導入段階にある可能性がとても高い。
この 不健全なERPビジネスの仕組みを健全にすることが、弊社の使命だ。