“DX” の推進に関心がある方は、DXレポートの価値と限界の方が役に立つと思います。


BIは、Business Intelligence の略だ。

今までの記事にも出てきたので、BIという言葉自体には、すでに馴染みがあるでしょう。

でも “ERPのサイトで、どうしてBIを説明するの?” と思われたかもしれない。

そこで、その理由から説明することにする。 とても重要だからだ

ERPのサイトでBIを説明する理由

ERPは、会計、販売管理、購買管理、生産管理など、企業の基幹業務システムをパッケージ化したソフトだ。

ERPを導入するには、最低でも5千万円以上の初期投資が必要になる。
(この記事では、サブスクリプションでの導入は、前提にしていない。)

ということは、その投資案件の最終決定者は、社長ということなるはずだ。  

高機能のERPとなると、最低でも5億円は下らない投資になる。

ということは、その投資を決定する社長にとって最も気になることはなんだろう?

そうです。投資効果だ。

“ERPを導入したのはいいが、経営に役に立っているのだろうか... ”

実は、ERPを導入しただけでは、社長が投資効果を実感するのは難しい のだ。

なぜだろう...

ERPは、業務処理を実行するための仕組みだ。

誤解を覚悟で極論すれば、取引が発生してから財務諸表を作るまでに必要な仕事を効率的に行うことが、ERPの役目だ。

とすると、ERPを導入したことで、社長が実感できることは、

  • 月次決算が早くなったので、旧システムに比べて前月までの経営状況が早くわかるようになった。
  • ???

2つ目以降を書こうとしても、私の見識では書けない...

もちろん、真剣に考えればいろいろ出てくるが、そうすると、ここで説明しようとすることが、わかりにくくなってしまう。なので、あえて1つに留めている。

社長の最大の関心事は、売上を上げるかコストを下げること、つまり儲けること だ。

但し、売上や利益は、結果でしかない。また、結果はコントロールできない。

コントロールできるのは? そうです。プロセスです。

ということで、経営者は、売上増大に寄与する投資、コスト削減に寄与する投資に対しては、GOサインを出すわけだ。

ところが、ERPをうまく導入したとしても、社長に投資効果を実感してもらうのは、極めて難しい。

突然ですが、社長の日々の仕事はなんだろう?

答えを書いてしまえば、 “な~んだ” と思われてしまうことは、わかりきっているが... 

そうです。

経営の実態を、できるだけ早く(かつ、できるだけ正確に)把握したい のだ。

今月の売上は、いくらぐらいになりそうなの?

営業利益は、いくらぐらいになりそうなの?

今期の予算に対する実績は、どうなりそうなの?

社長は、なぜ、こんなことに、それほどまでに関心があるのだろうか?

そうです。

予算に対して実績が下回っている場合、できるだけ早く手を打ちたい のだ。

なので、経営の状況をできるだけ早く知りたい。

できれば、昨日までの実績データを使って... 


お待たせしました。

なんと、BIを使うと、経営者が、前日までのデータを入手して、そのデータを経営者自らが分析して、必要な対策を講じることができるようになる のだ。

驚きました?

ERPだけでは、こんな芸当はできません。

なぜなら... そうです。ERPは、業務を効率的に処理するための道具だからだ。

もちろん、ERPを使えば、例えば前日までの得意先A社の売上データを入手することはできる。

財務部門が、データベースが一元化されたERPのデータベースからデータを抽出して、エクセルに加工して経営者に提供することもできる。

さて、なにが違うのでしょう?

もう一度、10行くらい前に書いた同じ内容を掲載する。

軽く読み飛ばされたかもしれないので。

なんと、BIを使うと経営者が 前日までのデータを使ってそのデータを経営者自らが分析して必要な対策を講じることができるようになる のだ。

下線の文言に注目してください。

なんと、BIを使うと、経営者が、【前日までのデータ】を使って
そのデータを【経営者自らが】分析して、必要な対策を講じることが
できるようになるのです。

【 】の中に注目してください。

  • 前日までのデータを使って
  • 経営者自らが 分析できる

ERPを導入しただけだと

  • 前日までのデータを入手するには、関係部門が必要なデータをERPから抽出して加工する手間がかかる
  • 経営者は、データを見て、解釈して、原因の分析などを管理部門に指示する...

まだ、わかりにくいと思います...

おもいっきり、具体例を作って説明します。

☆☆☆☆☆ 仮想企業X社 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

・仮想企業X社は、東京、大阪、名古屋の3箇所に拠点があるとする。
・扱っている製品は、A~Dの4種類とする。
・製品の販売ルートは、直販と代理店販売があるとする。
・営業部門は、第1営業部~第5営業部があるとする。
・会計年度は4月~3月で、今日は11月11日とする。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

社長の立場になって考えてみましょう。

社長は、次のデータを毎月求めているとする。

『前月末までの、月毎及び累積の、拠点毎/製品毎/販売ルート毎/営業部門毎の売上と営業利益』

『前月末までの、月毎の得意先毎の売上と営業利益』

『3番目は...  読者が適当に考えてください!』

これらのデータを、管理部門や経理部門が連携してエクセルに整理して
社長に提出するまでに、どのくらいの手間がかかるでしょうか?

延べ20時間?

もっとかかるかも...

社長からダメダシを食らったりして...

・ERPから、必要なデータを抽出する
・抽出したデータを、社長の要望に沿って加工する
・加工したデータを、エクセルシートでまとめる

エクセルで、100万件のデータを加工しようとすると...

パソコンが、凍りつく... フリーズのことです。

BIを使うと、前日(前月ではありません)までの上記のデータが、
昨晩のバッチ処理で、自動的に準備できています。

つまり、関係部門の作業時間は、ゼロ秒 です。

BIが、データを勝手に作ってくれています。

ちなみに、社長が、他の切り口でも分析したいとする。

例えば

  • 4半期毎に分析した
  • 昨年度と比較してみたい
  • 第4営業部門の製品Bの利益率が落ちている原因を、今知りたい
  • 知りたい切り口で、知りたい情報を、マウス操作だけで、瞬時に

4つ目に書いた内容を、補足説明します。

“知りたい切り口で” とは、例えば
『いつ(時期)、どこで(拠点)、だれが(部門)、なにを(製品)』

“知りたい情報を” とは、例えば『売上、営業利益』

マウス操作だけで『文字通り、マウス操作だけで(キーボード操作は不要)』

瞬時に。『数秒で』 100万件のデータであったとしても!

社長が、ERPからのデータを、こんな風に活用できるようになったとしたら

想像できますよネ!

なにを?

投・資・効・果!

それを可能にするのが、BIなのです。

整理しておきます。

  • ERPの導入には5千万円以上の初期投資が必要
  • その最終決裁は、社長が行なう
  • ERP導入後に、社長に経営データを準備するには、関係部門が、それなりの工数を使うことになる。その都度...
  • 社長が、違う切り口でのデータを要求した場合、ERPから必要なデータを抽出して、加工して、エクセルに整理する作業を、ゼロから行う必要がある...
  • 社長に提出するデータは、前日分までを加工できなくはないが、そうするには、関係部署に多大な負荷がかかる... 営業部門には、特に...

BIを導入すると

  • 社長は、どのような切り口ででも(その場で思いついた切り口で)、データを、自分で(マウスだけを使って)分析できるようになる
  • 社長は、いろいろな切り口でデータを分析することで、気になるデータの原因を究明したり、その場で対策案を考えることができるようになる

ERPを導入しただけでは、残念ながら、こうはいきません。

社長に、ERP導入の投資効果を実感してもらうには、BIが必須です。

賛同していただけます?

ERPを導入しただけでは、社長は投資効果を実感しにくいのです。

ERPとBIは、セットで考える必要がある のです。

まだ、BIの機能について、何も説明していません...

BIとは?

恐縮ですが、【BI】で検索してください!

先を急ぎますので...


BIを理解するために必要な、最低限のキーワードを並べます。

・ドリルダウンとドリルアップ

ドリルダウンの例: 年 ⇒ 上期/下期 ⇒ 四半期 ⇒ 月 ⇒ 日

ドリルアップの例: 日 ⇒ 月 ⇒ 四半期 ⇒ 上期/下期 ⇒ 年

これじゃ~ なんのことかわかるはずがありませんネ。

● ドリルダウンとは?

データを、もっと細かい単位で見たい時に使います。

あるデータが、年単位で表示されているとき、
マウスをダブルクリックする(“⇒” は、その意味です!)と
年単位の表示が、上期/下期単位の表示に一瞬で切り替わるのです。

もう一度、“⇒”すると、四半期表示に一瞬で切り替わるのです。
以下、省略します。

ちなみに“営業部 ⇒ 営業2課 ⇒ 社員” も、ドリルダウンの例です。

● ドリルアップとは?

データを、もっと大まかな単位で見たい時に使います。

ドリルダウンの逆の動きをします。

あるデータが、日単位で表示されているとき“⇒” すると月単位に続けて“⇒” すると、今度は【Y】単位に…

“⇒” するってなんのこと?

マウスをダブルクリックすることです。(すでに説明済みです...)

突然ですが、問題です。

Yは、なんですか?

答え:四半期

ちなみに “社員 ⇒ 営業2課 ⇒ 営業部” も、ドリルアップの例です。

● ドラッグ&ドロップとは?

多段階表示されている... と書くと説明できそうにありません...

エクセルシートには、行と列があります。

突然、理解できるレベルになりました!

行には、第1営業部~第5営業部が表示されているとします。
列には、月(4月、5月、… 10月)が表示されているとします。

つまり、今期の営業部門の4月から10月までの売上が表示されている とします。

文字列で書く限界を感じます...

【表A】 拠点 | 販売ルート | 製品 | 年 | 部門 |売上

4月5月6月・・・10月
第1営業部1012116
第2営業部88611
第3営業部4368
第4営業部128156
第5営業部5369

10、12、・・・は、売上金額とします。

単位は、ご想像にお任せします。兆 とか...

ここで、製品の文字をマウスでドラッグして左側の営業部の上で
ドロップすると、画面の表示が即座に【表B】に代わります。

【表B】 拠点 | 販売ルート | 製品 | 年 | 部門 |売上

4月5月6月・・・10月
製品A22182216
製品B4279
製品C6948
製品D75117

月毎/営業部毎の表示が、月毎/製品毎に瞬時に切り替わるのです。

突然ですが、問題です。

“拠点” をマウスでクリックして、そのまま左側の “製品” の上で
ドロップすると、画面はどうなるでしょうか?

少しは、考えてください。

答え:【表C】参照

【表C】 拠点 | 販売ルート | 製品 | 年 | 部門 | 売上

4月5月6月・・・10月
東京・・・・・・・・・・・・・・・
大阪・・・・・・・・・・・・・・・
名古屋・・・・・・・・・・・・・・・

・・・は数字ですが、省略しています。

ちなみに、この回答を引き出すには、仮想企業X社の情報が必要です。

どこかで見た表ですネ!

☆☆☆☆☆ 仮想企業X社 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

・仮想企業X社は、東京、大阪、名古屋の3箇所に拠点があるとする。
・扱っている製品は、A~Dの4種類とする。
・製品の販売ルートは、直販と代理店販売があるとする。
・営業部門は、第1営業部~第5営業部があるとする。
・会計年度は4月~3月で、今日は11月11日とする。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

● 多段階クロス集計とは?

月毎に、製品毎/拠点毎で表示させたい、とします。

2秒(マウスを移動してダブルクリックする時間)で、できます!

【表B】で、左側の製品の欄の右端に上の拠点をドラッグ&ドロップすると【表D】のように表示が変わります。

【表 B】 拠点 | 販売ルート | 製品 | 年 | 部門 |売上

4月5月6月・・・10月
製品A22182216
製品B4279
製品C6948
製品D75117

【表 D】 拠点 | 販売ルート | 製品 | 年 | 部門 |売上

4月5月6月・・・10月
製品A東京・・・・・・・・・・・・・・・
大阪・・・・・・・・・・・・・・・
名古屋・・・・・・・・・・・・・・・
製品B東京・・・・・・・・・・・・・・・
大阪・・・・・・・・・・・・・・・
名古屋・・・・・・・・・・・・・・・
製品C東京・・・・・・・・・・・・・・・
大阪・・・・・・・・・・・・・・・
名古屋・・・・・・・・・・・・・・・
製品D東京・・・・・・・・・・・・・・・
大阪・・・・・・・・・・・・・・・
名古屋・・・・・・・・・・・・・・・

月毎に、製品毎/拠点毎で表示されました。

右上の “売上” の上にマウスをもっていくと

↓ 数値データ
↓ 売上
↓ 営業利益

と、プルダウンメニューが表示されます。

ここで、営業利益を選択すると、表示される数値が、
“売上” から “営業利益” に、一瞬で替わります。

● グラフ表示

エクセルと同じように、データをグラフ表示できます。

以上


BIの威力の30%くらいは、説明したと思います。

“BIってすごいネ~”

でしょ!

ドリルダウン、ドリルアップ、ドラッグ&ドロップ、多段階クロス集計...

そうじゃないでしょ! 感動するポイントは!

★★★★★ 数百万件のデータの分析の切り口を瞬時に切り替えられる ★★★★★

この点が、最も感動するところなのです。

“BIって、一体どういう作りになってるの?”

データベースは、インデックスの... Whoops!

“Whoops?”

誠実な読者であれば...

ご自分でインターネットで調べ...

実は、どうしても説明したいキーワードが、まだ2つあります。

DWH(データウェアハウス) と ETL(Extract Transform Load)です。

データウェアハウス(DWH)とは?

BIは、ERPのデータベースをアクセスします。

いいえ、しません!

なぜだか、わかりますか?

ERPのデータは、取引データの集まりです。

大変重要なデータの集まりです。

なので、ERPのデータを直接アクセスするのは、危険です。

そこで、ERPのデータを、一旦、別のデータベースにコピーして
そのデータベースをBIはアクセスするのです。

このデータベースのことを、データウェアハウスと読んでいます。
データの倉庫です。

ちなみに、DWHは、読み取り専用で、書き込みはできません。

DWHには、ERP以外のシステムのデータもBI分析したい場合は、
そのデータもDWHに同じようにコピーして、BIで一緒に分析します。

なので、データーウェアハウス(データの倉庫)と呼ぶんです。

ETLとは?

Extractして Transformして Loadする ことです。

以上

『企業の基幹系システムなどに蓄積されたデータを抽出 (extract) し
データウェアハウスなどで利用しやすい形に加工 (transform) し
対象となるデータベースに書き出す (load) こと。
また、これら一連の処理を支援するソフトウェアのこと。』

上記の文章は、インターネットから拝借して載せました。

ここで、BIを使えるようにするまでの手順の概要を説明します。

1 DWHを設計する

2 データの分析の切り口を多次元で設計する
いつ(時間)、どこで(場所)、何を(製品)、誰が(部門)...
なんのデータを(売上、営業利益、...)

3 DWHをアクセスしてキューブを作成する
OLAPの説明が抜けている... ここは手抜きしよう... キューブの説明も...

4 夜間バッチ処理にキューブを作成する仕組みを組み込む

上の解説は、省略させていただきます...

おっと、忘れるところでした。

ETLです。

ETLは、ERPなどの業務システムから分析に必要なデータを抽出して、抽出したデータをクレンジング(変なデータを修正)して、クレンジングしたデータを、DWHに読み込んでくれるソフトです。

実は、ETLをどうしても説明したかった、もう一つの理由があります。

失敗談があるからです...

某企業のシステム開発部門の責任者だった時に、ETLの実装方法を部下に任せたのです。

ちなみに、当時は、ETLというIT用語はありませんでした。

問題は、“E” です…

業務システムから、分析に必要なデータを抽出するのに、たまたま、その部分の担当を請け負った部下が、アクセス(ACCESS)が得意だったため、アクセスで抽出処理のプログラムを開発したのです。

ところが、できあがってテストしてみると、抽出に数時間かかるのです。

ちなみに、データ量は、100万件を超えていました。

夜間バッチのすき間の時間帯では、この処理が終わらない...

結局、全ての抽出処理を、Oracle(オラクル)で書き直しました。

すると、30分もかからずに抽出できるようになりました。

私にしては、珍しい失敗談でした。

“他にも失敗してるでしょ? 白状したら楽になるよ!”

【 世の中には、“失敗” という言葉はない】

【あるのは、“経験” と “成功” だけ】

誰が言ったのかは、忘れましたけど...

動機づけの3要素

・必要性(がある)

・興味(がある)

・自信(がある)

RFMは、BIというよりもCRMの領域…

RFM分析で顧客を選別する...

R ecency(最新購買日)

F requency(累計購買回数)

M onetary(累計購買金額)

BIの特長

● マウスだけで100万件のデータの分析の切り口を瞬時に切り替えられる

● パソコン・リテラシー(活用能力)が高くない経営者でも使える

● 活用するには、本物のERPがきちんと動いていることが大前提

“本物の?”

ERPが “ERP” であるための3つの条件を覚えていますか?

BIを導入して、ERPの投資効果を経営者に実感してもらいましょう!


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