最適なITは選択できた。よ~し、ITを導入するぞ、とはいきません。

社内情報ネットワークを構築して情報の共有化を図りたい、ホームページを活用して販路を拡大したい、経理システムを再構築したいなど、ITを新規に導入したり、既存システムを再構築したりする場合、自社のIT担当の人材だけでは対応できないので外部のIT業者を活用することになります。

問題は、どのような方法でIT業者を選べばいいのか、ということです。

もちろん、IT製品の選択で紹介したケプナー・トリゴー法は、IT業者の選択にそのまま使うことができます。

でも、IT業者を選ぶための評価基準を知らないと、どうやって適切なIT業者を選んでいいのかわかりません。

企業の情報システム部門の責任者がIT業者を評価したデータはないの?
   あります...

日経コンピュータというIT関係の専門誌に、年一回記載される特集記事があります。

分野別の主流のIT製品や主要なIT業者などについて、1000 社以上の情報システム部門の責任者へのアンケートの集計結果に基づいて、顧客満足度などを評価しています。

少し専門的になるかもしれませんが、IT業者を選ぶ際に役立つ別の手段を、紹介することにします。

それは、CMM(CapabilITy MaturITy Model 能力成熟度モデル)という、世界的に認められた、IT業者を選定する際に用いる基準です。

CMMでは、IT業者のソフトウェア開発プロセスの成熟度を、5段階に分けています。

レベル1
   仕事のやりかたが個人によって違い、同じやり方を反復できない
レベル2
   同じ業務内容であれば、個人レベルでは決まった手順で反復できる
レベル3
   仕事のやりかたが文書化されており、他の社員でも同じ手順で行える
レベル4
   仕事のやりかたが全社的に管理/標準化されている
レベル5
   仕事のやりかたが継続的に見直されており、全社的に最適化されている

ちなみに、インドのソフトウェア開発企業は、最高水準であるレベル5を取得している企業が多いのです。

それで、米国の多くのIT企業は、人件費が格段に安くてソフトの開発能力が高いインドに、ソフトの開発を委託しているわけです。インド人は英語を話しますし…

では、IT業者を選択する際にCMMをどうやって使えばいいのでしょう?IT業者と面談する際に、「CMMの資格は持っていますか?」 と尋ねるのです。

『優れたツールや技法も、その組織の発展段階に応じて導入しなければ効果を生まない』という考え方からして、CMMは自社のIT活用レベルを評価する場合にも使えます。

例えば、定型的な業務処理を同じ手順を反復して行っていても、業務処理ルールが文書化されておらず、社員に周知徹底できていない状態の会社は、レベル2ということになります。

勘所2 自社のIT活用能力 で説明した考え方も、CMMの考え方と同じことなのです。

ところで、できる社員は、業務時間内で仕事を終えてさっさと帰り、できない社員は、同じ量の仕事を残業してこなす。

すると、できない社員の方が給料が高くなる。よくある話です。

ソフトの開発を委託する場合にでも、同じことが当てはまります。

IT業者の営業担当者は、開発に必要な工数を計算して見積りを算出します。

そして、受注後に開発が始まります。開発の途中で当初の見積り工数よりも超過することがわかったら、超過した分の金額の支払い交渉を、顧客側とすることになります。

発注側としては、優秀な開発担当者を自社の開発業務に割り当ててほしい、と思います。

でも、それはできない相談です。

営業は、利益率が高い案件に優秀な開発要員を割り当てるからです。

なので、値引き交渉をやりすぎると、結局損をすることになります。

この問題に対処するには、請負契約にすることです。

請負契約は、IT業者にとってリスクが高くなるので見積り金額はその分高めにはなりますが、追加の請求は避けることができます。

Win/Winの関係を目指したいものです。

“最適なITを、適切なIT業者を使って導入すればいいんだナ ”

“これで、コスト削減や顧客サービスの向上ができる!”  準備が整ったとは限りません。

社員がそのITを使ってくれないことには、IT経営は実現しないからです。

それには、導入したITを使いこなす 勘所を理解する必要があります。