IFRS対象企業のシステム部門の責任者の方がこの質問の回答に関心があるのでしたら、当事者意識が欠けておられるのかもしれません。なぜなら、“いつ頃から対応するのか” は、自社独自で決めることであり、システム部門の責任者はIFRS対応の一端を担っているからです。
インターネットや新聞などで扱っているIFRSに関するコンテンツは、IFRSへの取り組みの必要性に関わる啓蒙や初歩的な説明が多いようです。時々、“今から取り組まないと間に合わなくなる恐れがある” という論調のコンテンツを見かけるようにはなりましたが...
突然ですが、IFRS対象企業のシステム部門の責任者の方への質問です。
- IFRS強制適用の方向性は間違っていると思いますか?
- 自社がIFRS適用への対応を免れる可能性はありますか?
- IFRS対応は “経理部門主体の仕事” と思っていますか?
全ての質問に即座に “いいえ” と答えられたと思います。
1で “はい” と答えた方は、IFRS対応には不向きな人材の可能性があります。なぜなら、“上場” の目的を理解していないからです。この場に及んでも、IFRSの意義を理解していないからです。
2で “はい” と答えた場合、IFRS対象企業でない場合は当然です。また、子会社の上場維持費用を削減するために数年以内には連結対象の子会社がなくなる企業も同様です。両方とも、IFRS対象企業ではないので、“はい” は当然です。それ以外のIFRS対象企業が “免れる” 可能性があるとすれば、結果的に上場廃止になる場合だけだと思います。
補足します。
IFRS強制適用年度までにIFRS対応の財務諸表を作成できる体制を構築できない企業は、上場廃止になると思います。なぜなら、IFRSは “強制適用” されることになるからです。上場廃止になると経営者の首が飛ぶでしょうから、現実には起こりえないと思います。
IFRS強制適用への対応は、失敗が許されません。
失敗が許されないIFRS導入プロジェクトの意味するところがお分かりでしょうか?
そうです。難易度が極めて高いということです。ERP導入プロジェクトと比べてもIFRS導入プロジェクトは難易度が高いと思います。ルールを決めて、業務を改革して、システムで対応する必要があるからです。 それも、継続的に対応し続ける必要があります。IFRS自体が改定され続けるからです。
3で “はい” と答えた方は、すぐにIFRSの学習を始めることを強くお勧めします。
① ルールを決めて、② 業務を改革して、③ システムで対応することの大変さに一日も早く気づいてください。
“IFRS強制適用には、いつ頃から対応すればいいのですか?” への弊社の見解です。
“今すぐに” です。
どうしてでしょう?
“対応が間に合わなくなるから” ですか? 一見妥当な回答に思えますが...
割高な投資コストを避けて、導入失敗のリスクを下げるためです。
- ERPの導入にかかるコストを10年前と今とで比較してみてください。需要(IFRS強制適用の対象企業数)と供給(外部の支援業者数)との関係を考えてみてください。
ポイントは、“今すぐ始める場合” と “来年以降に始める場合” との投資コストの違いです。 - ERPを導入したにもかかわらず効果的に活用できていない企業の多さを考えてみてください。
ポイントは、“対応に使える期間” と “失敗するリスク” との関係です。
結果的に、IFRS対応で投資コストが膨らんだ場合、責任はシステム部門の責任者にあると思います。なぜなら、システム対応がお金と時間の半分以上を使うからです。
IFRS対応の担当部署である経理部門に責任を転嫁することだけは、なんとしても避けたいところです。
グローバルにビジネスを展開しているシステム部門の責任者の方には、責任重大な仕事が、間近に迫っています。