SAP社のサポート期限切れが、2025年から2027年に延長されようと、さらに延長されようと、情報システム部門の責任者(ERP管理者)には、ERPの導入・活用に不可欠なノウハウに習熟する必要があることに変わりありません。

ERP導入方法論の肝を30秒で説明できない方は、この記事を最後まで真剣に読んでいただきたい

根本的な対策

情報システム部門の責任者にとって、ERPに関わる問題を解決できる根本的な対策は、一つしかない。それは、ERPの導入・活用に不可欠なスキル、ERPの導入方法論 に精通することだ。

つまり、あなたがERPに精通した人材になることが、「SAP 2025年問題」に対処するための前提条件 だ。

ここで注意が必要なことは、SAP製品の資格を持っている外部の人材には、ユーザー企業のERP管理者は務まらないことだ。理由は、ERP導入のリーダーに必須のスキル(※)がないからだ。
      ※ ERP導入の失敗を避ける5つの条件 を、お読みいただきたい。 

なので、SAP製品を導入した実体験が豊富なSAPコンサルタントを採用すれば問題は解決する、とはならない。

「SAP 2025年問題」で真剣にお悩みのあなたが、すぐに実行できる解決策

私が20年間以上のERPに関わる実体験で得たノウハウを、2年以上の期間を費やして体系化した『ERP管理者 養成講座』を繰り返し学習して、SAPコンサルの判断ミスや説明不足を指摘できるぐらいのスキルやノウハウを、短期間で習得することだ。

IT全般に精通している情報システム部門の責任者であれば『ERP管理者 養成講座』を繰り返し学習することで、会計や生産管理などの業務知識、ERPの導入方法論など、ERPの導入やERP稼働後の活用を推進する人材に必要不可欠で実証済みのスキルやノウハウを、短期間で確実に習得できる。

尚、会計(財務会計、管理会計)への深い理解は、ERP管理者である大前提だ。

ユーザー企業が取り得る3つの選択肢

① SAP S/4HANAに入れ替える

この選択肢は、全く違うERP製品を導入することになるので、追加開発してきたソフトは、全て使えなくなる。なぜなら、データベースの構造が異なるからだ。

この選択肢を選びたい情報システム部門の責任者は(前任者が残した)負の遺産の一掃を図る機会と思うかもしれませんが、現実には、経営者への高額な投資対効果の説明は、相当難しいはずだ。

  ● データベースはSAP S/4HANA専用のSAP HANA

この選択肢の場合、他社のデータベース製品は使えないので、情報システム部門は2種類のデータベースを保守することになり、データベースを維持管理する仕事が相当増えることになる。

社員のパソコンが、WindowsとMac のどちらでも使っていいとしたら、情報システム部門の情報系を担う人材の仕事量が増えることになるのと同じ理屈だ。

  ● SAP S/4HANAに精通した人材不足

2027年までにS/4HANAへの入れ替えを行う企業が多い場合、SAPコンサルの月額料金は、確実に高騰する。そうなることは、需要と供給の関係から明らかだ。同じERP製品への入れ替えが、同じ時期に大量に発生するからだ。

この選択肢を選んだユーザー企業は、S/4HANAを導入した実体験がない似非SAPコンサルに月額300万円を超える高額な料金を支払うことになる可能性が高い。

SAPベンダーの立場では、ユーザー企業に高額な料金を請求しながら自社のSAPコンサルを育成するわけだ。SAPベンダーの立場で考えていただきたい。SAPコンサルを育てるには、ユーザー企業で実地で学ばせるしか育成する方法はない。

御社に割り当てられた新米コンサルは、必死に学習することになる。今週学んだ内容を、来週教える。来週学んだ内容を再来週教える...

自社に割り当てられたSAPコンサルが、S/4HANA導入の実体験がないことを、あなたは見破れますか?
(見破れた場合、そのコンサルの月額料金の引き下げを、要求すべきだ。)

② 現行のSAP製品を使い続ける

保証期限が切れるSAP製品を、保証期限終了後も使い続けるには、第三者保守サービス(例:リミニストリート)と保守契約を結ぶ必要がある。

第三者保守サービスと保守契約を結べば、サービスレベルを高めながら保守料金を相当下げられる可能性があるからだ。大型のERP製品の保守料金が高すぎることの証左ではあるが...

③ 他のERP製品に入れ替える

この選択肢を検討できるユーザー企業は、ベンダーロックイン(特定のベンダーの製品を使い続けるしかない状況)には陥っていないことになる

問題は、自社に最適なERP製品を選択して経営に効果的に活用できるだけの力量がある社内人材を有する企業が、極めて少ないことだ。

私の電話による聞き取り調査では、上場企業でも15社に1人程度しかERPの導入・活用を推進できる人材はいない。

企業の規模が大きくなるほど稼働しているERPに精通した人材はいなくなる。分業しているからだ。

3つの選択肢のどれが、自社にとって最適なのだろうか。その判断が的確にできるのは、ERPに精通している人材だけだ。

ERPに精通している人材であれば、ERP導入方法論の肝を、30秒で説明できるはずだ

「SAP 2025年問題」とは

SAP社が開発/販売し、国内だけでも2000社の企業で稼働しているSAP ERPの保証を、SAP社が(当初の予定から2年延長して)2027年で打ち切ると発表したことを指す。

尚、「SAP 2025年問題」は、SAP社の都合だ。主流のERP製品が肥大化し過ぎてリアルタイム性を担保できなくなってしまったからだ。

ちなみに、マイクロソフト社が開発・販売しているWindows OSやオラクル社のOracleデータベースなど、ソフトウェアのベンダーは、(ユーザーに最新版への更新を促すためにも)保証期限を設けている。ソフトウェアだけでなくハードウェアも、大半の機械で(保守部品の在庫を持つ必要があるので)保証期限を設けている。

要は、保証期限を設けることは、製品を改良し続けているメーカーの立場では、合理的であり、ユーザーの立場でも納得できる慣習として受け入れられているということだ。技術革新は、メーカーの既存製品の改良や新製品開発という努力の結果でもある。

では、ユーザーが受け入れている “保証期限” という慣習が、ERP製品の場合、なぜ “問題” になるのだろうか。それは、ERP製品が稼働している企業への影響力という意味では、“経営レベルでの問題” だからだ。

なぜなら、ERP製品は、企業の基幹システムという業務の中核を担っており、人間でいえば心臓に相当するからだ。心臓に不具合が起きれば死に直結することになる。ERP製品の不具合(バグ)が原因で製品を出荷できないような状況が続けば、企業は相当のダメージを被ることになる。

なので、基幹業務の中核を担っているERP製品の保証がないまま使い続けることは、経営レベルでのリスクを放置することであり、保証が受けられないERP製品を使い続ける選択肢は、ERP製品を導入した企業ではありえない。

例外は、ERPのソースコードをカスタマイズした場合だ。ERPのバージョンアップができなくなっているので “問題” にはならない。

要は、自社開発していた基幹システムを、高額な投資をしてERP製品に入れ替えたことにより、ゼロベースでの業務プロセスの再構築的確な経営意思決定に不可欠な信頼できるデータの迅速な入手など、採用したERP製品から様々な恩恵を受けてきた企業が、突然、経営レベルのリスクを負わされてしまったのだ。