ERP導入プロジェクトを推進している最中に部門責任者同士が対立した場合、ERP管理者は、どうやって困難を克服するか、熱意が切り札になった実話をご紹介する。

ある企業で、ITマネージャーとしての仕事の一部として、ERPの導入作業をプロジェクトリーダーとして推進していた。このプロジェクトは、4社の顧客との間でEDIの仕組みを構築する必要があった。

3社目までは、導入作業は概ね順調に推移していた。最後の1社の顧客とのEDIの仕組みは、業務処理の一環として顧客からのEDI経由での受注情報を下請け業者8社に発注するという複雑な処理が含まれていた。その業務処理の仕組みを構築するには、新しい業務プロセスを設計する必要があった。

業務プロセスの大まかな流れを作って顧客側のプログラムマネージャーである社内の責任者に、設計した業務の流れでいいかどうか打診した。そこで、ある業務ルールについての要望が出された。その責任者の立場からしてみればもっともと思われたので、その線で進めてみようと思った。

   ところが、財務部門の責任者にその案を報告したところ、その案では問題があることを指摘された。財務部門の責任者の立場に立ってみれば、確かにそう思えた。

   結果的に、2つの部門責任者の意見が対立し、どちらかに業務ルールを決めてもらわないとプロジェクトが進まない状態になってしまったのだ。プロジェクトリーダーの立場からしてみれば、どちらの意見にもその立場になってみれば、もっともな意見に思えた。無論、ERP導入の責任者には、現場の業務ルールを決める権限がないことは言うまでもない。話し合いが持てない...

困ってしまった。

実は、プログラムマネージャーと財務部門の責任者とでは、勤務場所が新幹線で3時間以上も離れており、どちらかが相手先の勤務場所に移動しなければ話し合いすら持てなかった。

読者がERP導入責任者の立場であれば、このような場合、どうするであろうか?

私が取った策は簡単だ。

財務部門の責任者に頭を下げて、出張することを頼んだのだ。そして、二人は同じテーブルに座った。

現実は、そこまでが私の仕事であった。なぜなら、二人は椅子に座るとすぐに話し合いを始めたのである。二人には、私がいかに困っているかが分かっていた。 

私の熱意は通じていたのだ。