ある上場企業の方が、弊社のサイトで読者登録をしてきた。それから、その方(以下、窓口の方)とのメールでのやりとりが始まり、しばらくして スポット訪問 をご提案し訪問することになった。

弊社がスポット訪問を提案する場合、事前に窓口の方の問題意識、課題の解決意欲の高さを確認することにしている。情報システム部門の方ではなかったが、会社の中枢部門でもあり、リーダー予定者で課題の解決に取り組む覚悟ができている(と感じた)ので前提条件を満たしていると判断した。

世界中に拠点があるグローバル企業なので、窓口の方にERP製品の導入状況を調べてもらった。その結果、グローバル拠点で10種類を超えるERP製品が導入されていることがわかった。日本で知られているERP製品は、全て導入している! 尋常ではない。。。

なぜそういうことになったのかは、すぐに察しがついた。本社の情報システム部門の責任者がERPに精通していないだけでなく、会社としてのガバナンスが機能していない。

尚、公開されている中長期経営計画には、ガバナンスが機能していないことが経営課題の一つとして掲げられていた。ウーン。。。どうしたものか。経営陣には問題意識はあるが、現状を打開できる人材がいない。窓口の方は情報システム部門の方ではないが、問題意識が相当高いので、なんとかなる?

訪問前日のこと。突然、窓口の方からメールが入り、自分はリーダーではなくなったとのこと。直属の上司が、その上司の執行役員がリーダーを務めるのがふさわしいと、執行役員を含めた3者会議の場で発言したようだ。

訪問する日になった。プレゼンで説明することになっているプロジェクトの推進体制は、前日メールをいただいた後、窓口の方から執行役員に変更していたのだが、どうも釈然としない。なので、電車の中でリーダーを窓口の方に戻した。

さて、会議室でのプレゼンが始まった。推進体制の説明をしたとき、“XXさん(窓口の方)は、リーダーとしての覚悟ができています。”と発言したところ、窓口の方曰く “僕は、そこまでは言っていません。” とのこと。メールには、そう書いてあるのに... 相当お役に立てる、企業風土の改革から始める必要がある、と思っていたのに...

窓口の方の上司が弊社を嫌っていることは、到着してすぐに窓口の方から聞いていた。自分の部下が全社的なプロジェクトを仕切ることになることに危機意識でも抱いたのだろうか。

案の定、上司の質問(というよりも、質問の形をした自分の意見)は、私に疑問を呈する内容ばかりだった。その方は、全社的なガバナンスの担当者なのに... 妙に納得してしまった。

3種類以上のERP製品を導入している企業は、ERPへの基本的な考え方が間違っている。なぜなら、導入しているERP製品の数が多くなればなるほど、各々のERP製品の操作方法が異なるため、経理部門が各々のERP製品の財務諸表に直接アクセスすることができなくなり、会社として一元管理できなくなるからだ。

グローバル拠点横断での継続的な業務改革もできなくなる。なぜなら、ERP製品毎に業務プロセスを制御するパラメータが異なるからだ。

いずれにしても、社内に ERPの導入・活用に必要不可欠なスキル を有する人材がいないことには、多数のERP製品をバラバラに導入している状況を打開することはできない。